月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第9章 チャームフューリー部隊
長身のロルフとまだ少年のコーエンが降り立ったのは鉱山ドームだった
ドームは大きく2層に分かれており、
上半分の居住区
下半分が採掘現場となっていた
ドームと言っても月の地表には出ておらず、ほとんどが地下都市のような構造をしている
これら地下のチタニウムや鉄などを採掘しては、加工処理しては月の地表に設置された大型のレールガン〈マスドライバー〉によって宙域のコロニーへ鉱物を射出していた
月のチタン〈ルナ・チタニウム〉は希少な資源で高価で取り引きされる
加工しにくい分、耐久性があり、
モビルスーツや戦艦の材料となる
軍事基地フォン・ブラウン市の近くに位置する〈危難の海〉にある都市〈アガルム〉は絶好の鉱山だ
宇宙へ飛び出した重機使いの労働者たちはこの街に集まっていく
「にぎやかな街ですね、ロルフさん」
「そうですね、我々パイロットはなかなか来れない所です」
歳下で新人の少年コーエンはともかく、
格下相手にも丁寧な口調のロルフは小隊一物静かな男で、パイロットのくせに争い事を好まない青年だった
当然、荒くれ者が多い鉱山都市に足を運ぶのも初めてだった
「とりあえず人が集まりそうな酒場を張って、情報収集しましょう
変化があれば噂になっているかもしれません
ネットにも上がらないようなナマの噂が」
「オッケー、でもボクは酒場に似合わないから居住区の少年たちから噂をとってきますよ
ここからは別行動にしましょう、ロルフさん」
「そうですね、まずは広く情報を拾い集めてきて、あとで合算して精査しましょう
1時間ごとに端末で状況報告と現在位置を共有しましょう
おそらく鉱山ドーム側に巨大兵器は持ち込まないと思いますが、そのパイロットたちが紛れているかと思われますので、
行動にはじゅうぶんご注意を、コーエン」
ふたりは露店が立ち並ぶ雑踏で別れた