月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第9章 チャームフューリー部隊
ロルフは酒場に入る前に露店の古着屋を覗いた
いかにも耐圧スーツというのは悪目立ちしてしまう
鉱山の住民は、ラフな格好か仕事着の作業用宇宙服の姿が多い
それに引き換え、ロルフはモビルスーツ乗りといった風貌だった
少しラフなポロシャツでも着替えようかと思ったが、無精ひげすら無いキッチリした身なりの自分には労働者のフリはムリがあるな、と諦めた
それならば、資源調達の営業マンのような格好のほうが自分には合いそうだ
安物のタイトなスーツとワイシャツ、ネクタイに身を包み
居酒屋に入る
まるで営業マンが出張で立ち寄ったかのようだ
カウンターで安物の酒を注文する
「アンタ、買い付けに来たのかい?」
気さくなバーテンが声をかける
「ええ、ここは初めてで、賑やかな街ですね」
「商社マンってことはサイド6から来たのかい?アースノイドには見えないしな
俺の妹がサイド6に居るんだ、あっちの景気はどうだい?」
「ここより落ち着いていますよ、中立国なので社会は安定していますから妹さんも住みやすいでしょう
ところで月にもテロリストが居てるって本当ですか?そんなイメージは無かったもので」
「さぁな?月の裏側には新しいジオンが息巻いてるらしいが、俺たちからすれば彼らも巨大なテロリスト組織みたいなもんだ
最近はジオン同士の仲間割れが多いらしい
身内のはずの〈キサンドリア〉が反乱起こしたりしてるからな」
「ああ、それは私も耳にしました
何なんでしょうね?」
「俺たちスペースノイドも一枚岩じゃないからな、
連邦の圧政に反対するキサンドリア、
戦争屋のジオン
目的は似通っていても、手段と方法が違うんだろうよ
ほら、そこに警官のハリスが居てる
よぉ、ハリス!
テロリストは見つかったかね?」
呼ばれた男がグラス片手に近寄ってきた
簡単に見つかるんだったら、こんな所でヤケ酒あおってないさ?
アンタ、商社マンか?
フォン・ブラウン?
グラナダ?」
「いえ、サイド6です、こちらに来た途端にテロリスト騒ぎで参ってます
さっさと買い付け済ませて戻りたいんですがね」
「手配されてるのはOL女と少年のパイロットだ、見かけたら近付かないことだね
通報して逃げだしゃいいさ」