月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第9章 チャームフューリー部隊
追跡部隊の少年兵コーエンはもともと鉱山小惑星のサード・ルナで生まれ育った
親は採掘用の重機モビルスーツの操縦士だったので、小さい頃から小型のモビルスーツには慣れ親しんでいた
サード・ルナでは自由奔放な生活で、規制もゆるかった
10歳の頃になると簡単な操縦をマスターしてしまった
それはコーエンに限らず、鉱山育ちの子供たちは小型モビルスーツで集落の作業の手伝いなどをするのが当たり前だ
そうなってくると両親は息子をきちんとした教育を受けさせたり、本格的な操縦の養成所に通わせたくなるものだ
集落から代表の5人の少年少女が集められ、集落みんなの金を集めて月の養成コースへ行かせた
2年の養成所暮らし
2年の作業に関する仕事をまわしてもらい
ようやく連邦軍のパイロットへ志願したのだ
何人かは同じくモビルスーツのパイロットに、
その他何人かは月の鉱山で重機モビルスーツの操縦士として働き始める
他の志願兵と比べて、圧倒的に操縦テクニックが高かったコーエンはあっという間に訓練生から新兵へ、そして小隊のパイロットへと目標に向けてひた走った
退屈な防衛部隊だったが、マーティンに拾われると追跡部隊に参加させてもらえるようになった
他の小隊と比べて独立部隊への参加は大きなチャンスだ
危険も大きいが、
今後に羽ばたくキッカケも得られる
いつまでも平和で退屈な堕落した防衛部隊に染まりたくはなかったのだ
〈アガルム〉の居住区を歩いていく
〈鉱山都市といっても街並みはキレイだな〉
〈今を思えば小惑星の暮らしは酷かった〉
〈両親が離させたくなる気持ちもわかる〉
〈ほら、ここの子供たちは痩せ細ってもいない〉
〈しっかり食事が摂れる環境にあるんだ〉
〈ボクも頑張って働いて稼ぐんだ〉
〈そして父さんや母さんを月に呼んで一緒に暮らそう〉
コーエンは今回の実験機の訓練を兼ねたテロリスト探しは大きなチャンスだと捉えている
新型と関われるなんて、そう滅多な事では無いのだ
さらにテロリストを見つけて拘束できれば、ますます色んな部署から認知されるだろう
それにラッキーだと感じたのはテロリストが百戦錬磨の兵士たちではなく、施設から抜け出して兵器を無断使用した訓練生だということだ