月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第9章 チャームフューリー部隊
〈こんなラッキーな事は他に無いぞ!〉
新兵あがりの少年兵コーエンにとっては恵まれた任務だったのだから
脱走したテロリストの訓練生も自分と同じような年頃だった
なら鉱山の荒くれ者の男たちの中にまぎれても目立つだけだろう
きっと採掘現場ではなく、居住区に潜んでいるはずだ
コーエンは居住区の公園でたむろする若い連中に声をかけまわる
「最近ここに来た流れ者の若い男女いないかい?」
「そんなやつらウジャウジャ居てるぜ?
なんせここは鉱山の街なんだからな!」
何人にも声をかけ、ナマの声を集める
「アンタも若い男じゃないか?」
「テロリスト探しかい?」
「金はくれるのか?」
「露店によく物乞いの子供たちを見かけるぜ?」
「そういえばグリム区の宿に見かけない女のコが居てたな?カワイかったぜ?」
「兄妹みたいなのが露店で飯を食ってたな?あの女のコは派手な顔立ちだったんで覚えてる」
「オレはOLみたいなお姉チャンに声をかけられたぜ?宿を探してるとかって?アレは鉄の買い付けに来た営業マンだと思うんだ?」
どこまでがフェイクな情報で、どこまでがナマの声なのかはわからない
でも、こうしておぼろげながらにキーワードのパーツが集まっていくものだ
そんなとき、仲間のロルフから定期連絡が届いた
端末にはグリム区の位置情報が転載されている
こちらも似たようなキーワードを拾えている
コーエンは聴き取りを中断し、大通りの向こう側にある区画へ向かうのだった