月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第9章 チャームフューリー部隊
その日の夜
宿の一室のベッドの上では苦悶の表情の女性
キャロライン・ウェスティン
襲撃してきた謎の少女は笑みを浮かべながら追ってくる……!
その光景は夢の中まで追ってきた
キャロラインは悪夢にうなされながら苦しんでいた
宿まで運んだのはチームメイトの少年兵
コーエン・ゾーフェン
コーエンは雑踏の中キャロラインと合流したものの、彼女はコーエンの顔を見た瞬間ホッとしてなのか、意識を失ってしまった
状況がつかめないが、出血がひどいことはひと目でわかった
〈なにかあったに違いない〉
〈ロルフも路地裏で何者かに対峙していた〉
〈人通りが少ない路地も危険たが、人混みの中の襲撃はもっと危険だ〉
〈隠れなければ……!〉
コーエンはキャロラインの肩をかついで通路を抜けていく
鉱山の男たちが集うこの街には飲み屋が多い
そして宿屋も多い
コーエンは小綺麗なホテルではなく、うらぶれた汚い雑居ビルのような宿を見つけ、駆け込んだ
宿の親父は怪訝な表情でふたりを睨みつけたが、傷ついた女を放り出すほど性根は腐ってなかった
ひと癖も二癖もあるような客人を相手にしてきた親父だ
なにかあったのだろう、と尋ねるわけでもなく部屋を用意して簡単な医薬品を渡してくれた
コーエンはポケットからネックレスを取り出して宿の親父に渡した
それは小惑星サード・ルナに暮らす鉱夫の父から渡された大切なペンダントが付いていた
「これは貴重な鉱石ルナ・フェルスパーだ、
お前が何かで困ったとき、
何かに役立つだろう」
旅立ちの日に託された父の顔が浮かぶ
「親父さん、宿の料金とは別にこれを渡します」
「ムーン・ストーン鉱石の原石だな?
こんなの、坊主がどうした?」
「ボクの父はサード・ルナの鉱夫です、旅立つときに譲り受けたものです」
「ふん! オレも元鉱山の男だ、男が男に託すモンをもらえるかよ!宿代だけでかまわねぇ!
その代わり、前払いだ!」
宿屋の親父は突っ返してきた
「あ、ありがとう、親父さん」
「なんだか訳アリのようだな、だが医者は呼べねぇ!後からアシが付いちまう!
医者は他と繋がってやがるからな
とりあえず、薬品の手配はしてやる」