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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第9章 チャームフューリー部隊


数刻してコーエンが部屋に戻ってきた


「借りてきました」


「どうしたの?こんなにすぐに」


「宿屋の主人がここの女性客に声を掛けて、向かいの古着屋で買い出しを頼んでくれたんです
 ここの宿、たまたま女性も泊まっているようですね
 鉱山の出稼ぎ連中だけかと思っていました」


「Tシャツなんて着れないわよ?わたし肩を上げげられないんだから!」 


「ああ、そっちはボクの分です
 キャロラインさんはこっちのボタン付きのほうです
 オーバーサイズ気味ですが、そのほうが着やすいでしょ」


「……シャワーは……さすがにムリね」


「今日は身体を拭くだけでガマンして下さい
 準備しますから」


コーエンは立ち上がって部屋の奥にある浴室らしきところからお湯を張った桶とタオルを持ってきた


「ちゃんと目隠ししますから」



コーエンが本当にタオルで目を隠し始めたのでキャロラインは笑ってしまった


「キミ、本当に目隠しでする気?」


「もちろんです」


おずおずと、手を伸ばしてあたりを探る様子が馬鹿らしい


ようやく肩に手を触れて着ているシャツを脱がそうとするが、土台腕も上げずには出来そうもなかった



「……もう、いいからしっかり見ながらやってよ!Tシャツは破っていいから」


仕方なくコーエンは手探りで作業するのを諦めて、医療キットから小さなハサミを取り出すと、背中からTシャツをカットしていった


「熱かったら言って下さいね」



コーエンは熱いタオルでキャロラインの背中を拭きながら〈女性の背中を眺めるなんて久しぶりだな〉と思った


こうしてコーエンとキャロラインの潜伏生活が始まったのだった……



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