月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜
第9章 チャームフューリー部隊
キャロラインは身体を拭かれながら
まんざらでもないな、
と思った
これが他の男どもだったらすぐに飛びかかってこられそうだ
今のこんな状況では抵抗すら難しい
だが、コーエンはとてもうぶな少年で
そんな危険が微塵も感じさせない
一緒に居て気が楽だ
年齢が10以上も離れているので、弟というにもまだ幼いのだから
確かにモビルスーツの操縦技術は良かったが、まだまだ戦闘の経験不足だし、兵士としても未熟なのだが、オトコとしても未熟なのだ
そんなコーエンを前にして、あらわな姿をさらす事に羞恥心は低くなっていた
「背中ばっかりじゃなく前もしっかり拭いてね
前にまわっていいから!」
「いや、でも」
「汗をかいて気持ち悪いのよ、お願いね」
前にまわったコーエンの顔が真っ赤なことにキャロラインは笑ってやっては可哀想だな、と思った
コーエンはその場の空気に耐えきれず
「ち、ちょっとニュース動画でも流しておきましょうか」
と端末へ逃げ出した
キャロラインはおかしくてたまらなかった
ちょうどニュース動画では月の裏側のニュースが流れていた
当初はグラナダのテロリストとされていた主犯格たちだったが、今の報道では組織全体の動きとして捉えられているように変化していた
画面のテロップには「キサンドリアの反乱」と見出しが付いている
ネオ・ジオンへの支援組織てあったキサンドリアという団体がネオ・ジオンから離れようとしている
キャロラインは腑に落ちない
それならば追跡者として派遣された我々の部隊はなんなのだ?
意味のない指令に踊らされて、あげくにこのザマだ
部隊はすでに機能していないし、
テロリスト捜索は難航、
さらに何者かによる襲撃まで受けているのだ
キャロラインはこれ以上聞きたくもない報道内容てあったが、情報を得るためには耐えるしかなかった
「さぁ、コーエン!続きをして頂戴」
コーエンはもう逃げられないな、と悟った