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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第10章 ビクトリア


街から離れたふたりはエレベーターに乗り、最上階の展望ドームへ向かう


エレベーターから降りると眼の前には巨大な地球の姿が現れた


「うわぁッッ!!」


「月の裏側のグラナダじゃ見れなかっただろ?」


「うん、スゴイスゴイ!」


確かにグラナダの月面では半日は漆黒の宇宙の姿しか見れない



そして半日は遠くの方にまばゆい太陽が見える


地球の自転とほぼ同じ公転を持つ月は地球と同じように半日で昼と夜を繰り返す


ただし真空に近い大気のため、昼間の見通しが良いだけで、空は青くはない


結局は黒い空



しかし、月の表側はこんなにも絶景が見れるのだ


キアラは無邪気な子供のように喜んだ


「ヨーロッパってどのあたり?
 黒海は?」


「黒海? あのあたりかな?雲が多くてわからないな
 ネオ・ジオンの地球寒冷化作戦のせいで常に雲が出ているから地表がハッキリしないね…」



ネオ・ジオンは小惑星フィフス・ルナを地上に落とし、凄まじいまでの地球環境破壊を行った


「あのへんかなぁ〜?」


「黒海に何があるの?」



「あそこが目的地なの」



「誰かいるのかい?お母さん?」



「んん〜?、 そぉね、そんなカンジ!!」



コーエンは子供の扱いに慣れているつもりだったが、よくわからない


だが、複雑な家庭環境なのだろうと、あえて問いただすこともせずそのまま受け止めた



「でも、このタイミングで地上に降りるのは難しいかもしれないよ?
 逆に地球の人たちはみんなこぞって宇宙へ飛び出そうとしているからね
 民間シャトルのチケットも取れない噂だから」



「逆だったら空いてるんじゃない?」



「どうだろうね?そもそも帰りの航路が無いかもしれない、戻る人も制限されているし、なかなか地球には降りられないんだよ」



「ふぅん」



キアラはそれでも眼をキラキラさせてドーム全体に映る地球の光景に心を奪われていた…



〈……きっと、あのどこかに居てるッ!〉


キアラは〈ストーム〉を引き継ぐべく、正当な継承者に会わなくてはならなかった



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