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月のウサギは青い星の瞳をしているのか 〜キサンドリアの反乱〜

第10章 ビクトリア


キアラとコーエンは公園のようになっている展望ドームのペンチに座り、しばしこの絶景のパノラマを堪能していた


すると、なにやら植栽の植木の向こうから男女の声がする



「………いや……さすがにこんな場所では……」



「………いいじゃないのよ………誰も来やしませんよ………女に恥をかかせないで」



「………や、やっぱりこういうのは……」



声だけがふたりの耳に届く


どうやらカップルがそばに居るようだ



それも女性のほうが積極的らしい



コーエンはアワアワと慌てている



キアラはうんざりした表情だ



「……なんだか、どこもかしこもサカッてるなぁ……」



「……キアラ、ちょっと向こうへ行こうか」



「いーじゃん! せっかくだから覗いてみようよ!」



「ええーーーーッッッ!!!

 ちょ、ちょっと、キアラ!待って」



キアラは制止するコーエンの声など聞かず、植栽の植木をかき分けて木々の中へ消えていった



コーエンは小さなキアラを放ってはおけず、仕方なく後を追いかけていくしかなかった



ガサガサと枝を払いながら進む


すると少し開けた場所に出てきた



そこにはキアラと対峙する大人の女性の姿が



スーツ姿の女性はかなり大柄だ


肩幅もがっしりとして、格闘技の選手のような体格に見える



それは採掘会社の社長ビクトリア・ニコラエビナだった



「なんだい、なんだい?次々と子供が出てきてさッ!?」



「え、なに? ボクは子供じゃないぞッ!?」



「あ、コーエン!失敗した!こっそり出来なかった」



「アンタたち、大人の会話を覗き見してたのかい、しょうがない子たちだねェ」



ビクトリアが腰掛けるベンチにキアラもちょこんと座った



「オトコのほうは逃げて行った!」



「いいんだよ、あんなヤツ!意気地なしはこっちから願い下げだよッ!
 新しい取り引きを持ちかけてきたから試してやったのさッ! まぁ乗ってきたらついでにいただこうかと思ってたんだけど……」



コーエンはなんて返事したらいいのかわからず、黙って座るしかなかった……


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