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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第9章 黒海海戦


皆がぞろぞろと格納庫まで降りてきた

たくさんの搭載機フリューゲルシリーズが並んでいて、一番奥にはラーズのジムⅢの姿も見える


しかし皆が機体ドックのほうを眺めているのに対してスティーブは反対の外壁へ繋がる非常口のほうへ向かっていた


「お父さま?どこへ行くの???」


「そっちかよ、イヤな予感がするぜ?
 飛ばされんなよ、ローズ」

ローズはそうラーズに言われても何のことを言っているのかわからなかった


「さぁ、こっちこっち」


するとハンガーから整備長のニルスが声をかけてきた

「スティーブの旦那、そいつ出すのかい?」

「ええ、ちょっと娘に新型機を見せてやろうと思いまして!」


「簡易的なタラップは付けといたけど、お嬢ちゃんには危ないんじゃねぇか?
 なんだ、全員で乗り込むのかよ?」


ニルスの問いかけにジェニファーとガブリエラはぶんぶんと頭を左右に振る


ラーズは笑いながらガブリエラの肩を押してやる

「知ってるか?ブルガリアではYESは横に振るんだぜ?」

「し、知らないわよッ!ちょっと!ウソでしょう!」



ガブリエラが外壁の扉へ押し出されると、そこは一面の空と海が広がるパノラマ展望となっていた

そして凄まじい強風!


ガブリエラの足がすくんで動かないのをいいことにラーズは意地悪に後ろから押してやった

「ほらほら、立ち止まってないで!
 あとがつかえてるんだからさッ!?」

「うそぉっ!?」


真下の海のほう、ゾーナタの後部のほうに大きな機体が吊り下げられている

しかし、そこにまで到達するには縄ばしごを補強した程度の簡易タラップがあるだけだった

「こ、こんなので渡れるわけないわッ!?」

「風に飛ばされんなよ?
 さぁ、ローズはこっちだ、暴れるなよ?
 オレの腹にしがみついとけよ?
 お前の軽さなら一瞬で飛んでいってしまうからな?」 

「アンタ、慣れてるわね?誰かと間違ってない?」

するとラーズもそう言われて“あぁ!そうか?”と違う少女だった事に気が付いた

“あの子の髪の色は赤毛だったよな”と数日前に蹴られた脚の痛みを思い出していた


スティーブとラーズがゾーナタに乗り込んできた新型機〈ビーネンシュトック〉

その大きさゆえにゾーナタの下部に固定されていたのだった


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