クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第9章 黒海海戦
成層圏から今度はゆっくり降下して海面付近を滑空する
何も無い高度より海面があるほうがそのスピード感が伝わりやすい
ジョンは壁の座席には座らずにラーズの背もたれを掴みながらパネルを見つめていた
“これだけの巨体なのにやたら滑らかに飛ぶんだな?”
連邦軍の量産機とは開発力の差を痛感する
「パワーがある分オレには向いてるな!
普通のヒコーキは動きが細かすぎるぜ?
ジョン、代わってやろうか?」
ラーズは返事も聞かずに席を離れた
「ちょ、ちょっと!?」
慌てて隣のローズがコントロールする
シートに座ったジョンは計器を眺めながら確認していく
「基本的には一緒だろ?ユニバーソルデザインってやつだ! どうだ、イケるだろ?
おい、ローズ!コントロールをまわしてやってくれ!」
「オーケー! 大丈夫よ、お兄さん
滅多なことでは壊れないから!ほらっ」
操縦桿にモーターの勢いが伝わって来る
右に、左に、少しづつ感覚を探っていく
「確かに普通のフリューゲルシリーズよりコントロールが安定している
シビアなコントロールってわけでは無さそうだ? これならヘタクソなラーズでも上手く操縦できるかもしれない」
「ひとこと余計なんだよッ」
そのとき!
隣のローズの顔つきが変わった!
すぐに背後のスティーブも気が付いた
「お父さま、敵です!」
「……だねっ!こちらは戦闘態勢をとれない、やり過ごして隠れよう
なぁに、見つかっても“ビーネ”で撹乱出来るさっ!」
〈ビーネンシュトック〉はさらに高度を下げ、海面ギリギリを滑空して母艦との反対の方向へゆっくり飛ぶ
まだ敵に気付いていないフリをするのだ
敵も警戒しながらゆっくり後を追ってくる
「お父さま、相手は4機小隊です!
このまま撃退しますか?」
ローズは10歳ぐらいの子供のようには見えない落ち着いたトーンで問いかけた
「どうせ無線で報告はされてるだろうね?
でもこの新型の機体の認識が出来ないから少々時間がかかると思うんだ?
ジョン君、岸に近づき過ぎると港町に迷惑がかかるかもしれないよ?
海上で仕掛けてみようか!
少し離れてからコントロールを娘に回して下さいっ!」
「了解だっ!」
ジョンはグリップに力を入れた
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