クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第10章 ムーンブレイド
エレベーターの密室はジェフリーにとって危険だと感じる
この青年も見るからに怪しいのだ
コイツが年老いた警備員なら“何も知らされてない捨て駒のスタッフ”だと思えば良かったが、あまりに若く見えるこの警備員は“何もかも知らされているスタッフ”のように思えるからだ
脚の銃を手にするには一度しゃがまなければならない
ジェフリーは背中側のベルトの裏に隠してある小型のピストルに手を伸ばそうとする
するとキアラが余計な事を言う
「ジェフリー?こんな狭いところで物騒なこと考えないでよね?彼を撃つのならさっきの広い場所でヤルべきだったと思うわ!」
「よ、余計な事を!」
「それはキアラの言うとおりです、どうやら本当にアナタはキアラのようだ
ボクが知る限りではアナタが最初のキアラですよ?」
「お前はいつから此処に居る?」
キアラがそう問いかけると青年は“さぁね?”とジェスチャーをしてみせた
「ホンモノのキアラで間違いないらしい、
アレクの子、キアラが本当に居るなんて驚きだッ!」
その言葉にキアラはバッ!と身を翻しジェフリーの脚にしがみついた!!
「ジェフリー!」
ジェフリーは咄嗟の判断で腰のピストルを素早く取り出し、至近距離で目の前の青年を撃った!
バンッ! バンッ! バンッ!
3発とも命中した!
「よくやった、ジェフリー」
「いいのかよ?ホントに撃っちまった」
「ああ、コイツは初めから怪しかった!
カタストロフマシーンの事や、キアラの事はともかく、〈アレク〉の事まで知っているなら、コイツは連邦軍のスパイだね?
それもこっちと向こうの二重スパイよ」
ジェフリーが足で軽く突付いてみると
青年はうっ!とうめき声をあげた
「痛いだろうがそんな傷じゃあ死ねねぇな?
かわいそうに、本当に連邦軍のスパイか?」
「ぼ、ボクは〈エターナル・チルドレン〉さ!
エターナル計画の超人類になる筈だったのにッ!くそったれッ!」
「エターナル計画???」
ジェフリーがポケットから止血テープを貼ってやる
「なんだ?撃っておいて助けてやるの?
お優しいのね、ジェフリー?
そいつは見た目よりも年寄りだよ?」
そう教えられて彼の顔を見たが、どう見ても10代後半の若者にしか見えなかった
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