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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第10章 ムーンブレイド


オーロラは意外と安心してこの状況を見れていた


不慣れなミッシング・チャイルドがうまく仕事をこなせようがこなせまいが関係ない


自分が知っているあのマシーンなら、このような事態ごときで窮地に落ちるわけがない、という自負があるのだ


数年前に自分があの場所に居たことを思い出す


あのときは何も知らない無垢な存在だった

真っ白な人間だった


なんの色にも染まっていない、ただそこに生まれて存在しただけ


そんな動物のような存在だった自分を守ってくれていたのがあのカタストロフマシーン〈ムーンブレイド〉だったのだから


自分の感情の赴くまま、マシーンは応えてくれた


オーロラはまだ自分が何者かわかっていなかった少女の頃のことを思い出す


山の中、地中深くに埋められていた〈ムーンブレイド〉

女の子がひとりでそこに立っていた


何も知らないまま


非力な少女ではあったが、彼女が悲しむとマシーンは吠えた

彼女が喜ぶとマシーンも踊る


何もわからないまま、マシーンは山を吹き飛ばし、空を割る


孤独ではあったが、弱くはなかった


まるで雪山の獣のようだ


少女はいつまでも雪山にとどまっているつもりだった


ある男に出逢うまでは


ハルフォード提督


彼に見出だされ、彼女はオーロラと名付けられた


そのとき初めて知らされる


自分が〈キアラ〉という存在であったことを


成人したキアラ、それがオーロラだったのだ


ときを刻んでしまった自分には

もうあのマシーンは必要ない



いま力を欲っしているのは新しいキアラなのだ


きっとマシーンは応えてくれるだろう


あの頃の自分のように


それがもうひとつのカタストロフマシーン〈ムーンブレイド〉


〈月に向けたヤイバ〉


〈ストーム〉の姉妹機〈ムーンブレイド〉なのだ


あの月から降りてきた〈ストーム〉に対抗するためにハルフォードは秘密裏に温存させていたもうひとつのカタストロフマシーンをぶつけようとしたのだった


〈ストーム〉VS〈ムーンブレイド〉


遺跡のような過去の怪物たちが

これから対峙しようとしている


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