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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第12章 薔薇の谷 編


その頃ラーズとターヤは〈薔薇の谷〉付近を散策していた

イバンのカプセル解除の作業はどうせ時間がかかるだろうと踏んでラーズが昔母親と暮らしていた場所を訪れていた


ゆるやかな坂が続く道

家屋が数軒ならぶ石畳とレンガの塀が散見されるがどれも廃墟であり爆撃を受けた跡のような酷いものであった


崩れたレンガの壁の跡を乗り越えて奥に見える家屋らしき廃墟があるものの家屋の壁も無くなっており部屋の床にガレキがいたるところに落ちているだけだ

屋根の跡も見つからず爆風で何処かへ飛ばされたように思える

一年戦争、グリプス戦役、ネオ・ジオン抗争など大きな勢力だけでなくローカルな軍事集団の争いもあったこの時代、何が敵なのか非常に複雑な勢力争いがあった


それらは徒党を組み、企業連合軍〈トランキュリティ〉となり地球連邦軍と敵対していた

ラーズたちと敵対しているトルコの〈ゼントリックス軍〉もそのひとつ


トルコに隣接するブルガリアもその脅威に怯えていた

ラーズは幼少期の思い出も忘れ去るぐらいの惨状だったが不思議と何の感情もわかなかった


“まぁ、戻ってくるつもりもなかったけどな”


ラーズはあたりをキョロキョロして隣の幼馴染の家のほうも覗いてみるがどこも同じようなものだった

人が住んでいる形跡もなく街の中心地から離れた丘の方はすでに見放された土地になってしまったのだろう


そしてイバンはこんな酷い土地に世捨て人のような暮らしを続けている

何のために?

彼は過去の贖罪なのか、ガブリエラへの想いなのか

崩れ落ちた故郷の姿を見て、ラーズにはもう帰る場所は無くなったのだと感じていた


普段から軽口を叩いたり悪態をついたりするラーズが此処へ来てから少し元気がなさそうだと気付いていたターヤは言葉を投げかけず静かに彼のあとをついてまわってくれているようだ


そんなとき丘の下から1台のジープが走ってくるのが見えた


「オッサンの車だ?」

「なにかあったんじゃない?」


2人は崩れたレンガ塀を乗り越えて手を振った



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