ジェンダー・ギャップ革命
第1章 逆襲の女と家畜の男
税金未納者が処罰の対象になる時代の再来を、この現代日本において、誰が予想しただろう。
だが、ここには、そうした咎人達を収容している。
看守である皇ありあ(すめらぎありあ)は、この役職に就いてから、いやと言うほど旧時代的な懲罰制度の恩恵を受けてきた。
廃工場を改築した収容施設は、従来の監獄とは別物だ。一つ一つの独房に、鉄格子はない。代わりに、頑丈な扉が囚人達を禁足している。
彼らの声は、だだ漏れだ。どこからともなく匂ってくる薬品臭が、死に物狂いの叫喚を、ともすれば実験動物が虚しい抵抗を続けているようにも色づけしている。
上司の月村に指示された扉に鍵を差して、回した。
小気味良い解錠音が、ありあの中枢神経を引き締めた。
「こんちはー、脱税を企んだのは、貴方かな?」
「順当な額は出すつもりだった!働いた半分以上も徴取されりゃあ、こっちは生活出来ねぇよ!!」
ビシィィィィ…………
ありあの振り下ろした革鞭が、男の身を竦ませた。
この施設に入ったが最後、刑の執行まで指折り数えて日々をしのぐか、男であれば赤子を産み続けるか、運良く釈放が決まっても、次は精神病棟に送られるかが関の山だ。
しかしこの男はまだ健康だ。心身ともに。
報告書によると、彼は確定申告の内容を偽ったという。