ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
「織葉さんのこと、好きですし」
驚くほど呆気なく、愛津の口を突いて出た。
あまりに重い本心は、きっと水泡と消える。それは愛津が星の数ほどいる人間の一人に過ぎず、特に世界の何かを変えることなく、動かすことなく、消えたあとも誰かの記憶に残るか怪しいのと同じだ。愛津の好意は彼女の胸に落ちた途端、ありふれた友愛の蓑を着る。
「それ、は……」
愛津は、織葉を見くびっていた。否、愛津が自分を過小評価していただけだ。精神的な尊さであれば、自分は上位だ。自負していたのに、彼女の前ではすこぶる弱い。
「自惚れるようなこと、ここで言っちゃう?」
「っ……」
「私の良いとこなんか、うわべだけなのに」
今消えても悔いはない、むしろ今の内に消えてしまいたいほどの思いが愛津を満たす。
この程度の会話なら、友人同士でも交わすのに。
織葉の分け隔てないまごころが、愛津だけのものと勘違いしてはいけない。
彼女が愛津の片手の指と指の隙間を埋めた。そこが感じやすい場所にでもなった気がした。