ジェンダー・ギャップ革命
第4章 享楽と堕落の恋人達
「取り乱してごめん」
気丈な言葉つきだった。
それから困った風に目を細めた彼女の顔は、愛津が毎日見ているそれだった。
「一方的に縁切ったから、恨まれてるかと思って。あんなとこで喧嘩は、まずいでしょ」
「お友達、だったんですよね?」
「昔の常連。お義母を手伝うようになって、店に行かなくなった。連絡先もブロックした。広告塔に任命された代表の娘が男と繋がっていたら、示しがつかない。そんな理由、酷いじゃない?そういう風に友達を切ったの、あれが最初で最後だった」
「…………」
女の敵は──…否、人間の敵は、何者なのか。何物か。
愛津は、ふと疑問に思った。
えれんや英真、それにえみるは、男を絶対悪と見なしている。一方で、ありあや月村はそうでもなく、愛津も織葉の街頭演説に立ち会うまで、特に考えたことがなかった。
「話してくれて、有り難うございます」
「話すでしょ。それかやっぱり、愛津ちゃんでも引く話?」
「いえっ、そんなことは……っ」
織葉に男の旧友がいても、どんな事情で彼女が友人を見限っていても、愛津には些細な事実だ。
彼女の美しさに惹かれた。彼女の誠実さを知っている。彼女は愛津の家の内情を知っても、少しも態度を変えなかった。