ジェンダー・ギャップ革命
第1章 逆襲の女と家畜の男
こうした理屈が受け入れられやすかったのには、えれんがまだ、ある議員の秘書であった時分の社会背景も関係している。
少し前まで国内では、少子化が問題視されていた。有力者達はこぞってあらゆる政策を練り、結果、恩恵を受けた一部の国民達はともかく、大半の女達からは、性的役割のハラスメントだという非難が上がった。
そこに出てきたのが「清愛の輪」だ。彼らの根本的な誤謬を指摘したのに始まって、女達の独立をマニフェストとしたえれんが選挙に出馬した。そして当選した彼女は意欲的に改革を進めていって、女尊男卑の地盤を固めるだけでなく、少子化問題からも目を背けなかった。各方面で顔の広かった彼女は、敏腕の研究者を抜擢して、男達の人体実験を成功させた。彼らの体内に人口子宮を植え込んで、身ごもらせるというものだ。
えみるが事務所に立ち寄ると、皇ありあと鉢合わせた。さっきまで同じ職場にいた同士、移動は別ルートだったらしい。
古びた町並みに馴染んだビルは、二階に昇って扉を開けると、えれんだけがオフィスに残っていた。
二人揃って今日の報告を済ませたあと、それとは別に、えみるはさっき受けた市民からの抗議の電話を伝えておくのも忘れない。