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ジェンダー・ギャップ革命

第1章 逆襲の女と家畜の男



「嫌な思いをさせてごめんね」

「いえ、女性にも神倉さんに批判的な方がいるなんて、昔は驚きましたけれど……」


 えみるにとって、ここはもう一つの我が家も同然だ。今や国内で彼女を知らない人間は赤ん坊くらいだろう女の隣に、すこぶる気軽に腰かけた。

 黒目がちで柔和な顔立ち、実際、人当たりも良いえれんは、広い人脈にも頷ける。薄化粧の肌は濃いめだ。彼女を格好良いと評価する声も著しい中、えみるは彼女が愛らしい分類に入ると思う。看守の制服を着用していないところでは、とりわけガーリーな装いを好むえみるより、黒とアイボリーという落ち着いた色味をまとった党首の方が、愛嬌を感じる。二十以上も歳上の女に対して、そうした心象は非礼だろうか。


「それに、未だ異性愛者がいるのも驚きです。今日入ってきた一〇八号さんに、さっきの電話の娘さんに。あのお母さん、娘が異性愛者でイジメに遭っている……と怒っていらっしゃいましたけれど、学校に電話するようお返事しておきました」

「えみるん、厳しい。私は男好きなのも分かるな。一〇八目の人?の元配偶者の、一〇七人目くん。彼、可愛かったもん。飼いたいくらい」

「元SM女王様、危ない発言はやめて下さーい」


 親しみを込めて諧謔すると、いつかえみるが母親の部屋で見た二〇〇〇年代の音楽雑誌に載っていたような、欧米風メイクが板についたありあがおどけた。

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