ジェンダー・ギャップ革命
第7章 愛慾という桎梏
昨夜、えみるは失恋した。
織葉を恋愛対象と見ること自体、例えば会えるアイドルに本気になるのと同じくらい、非現実的だ。えみるの耽った妄想は、時に少女じみていて、時にいかがわしかったが、所詮は夢にとどめておくものだったから、後ろ暗さも特になかった。
だが誰のものにもならない彼女は、天上から引きずり下ろされて、愛津に心魂を傾けていた。
えみるは、織葉を好きではなかった。愛していたのだ。
もの凄まじい喪失感がえみるにそう気付かせたのは、収容所を訪ねた彼女の中心に、愛津しかいないと悟った時だ。
織葉の願いを利用して、同情を誘おう。…………
彼女とホテルの部屋に入って、えみるの中で、いよいよ自分の救われなさが現実味を帯びた。
気が遠くなるほど何度も、呪いにも等しくなり得るほどの数、空想を重ねた彼女との夜──…彼女にとって愛津のためでしかならない以上、えみるは何も得られない。シャワーを浴びる流れに至って、目が覚めた。
「やっぱりいりません、帰りますって、帰っちゃった」
「えみるん、まさか」
「そうだよ、愛津ちゃんの身代わりだよ。織葉さんにあの子を庇わせるくらいなら、私がそうした方がマシ。ごめんね、ありあちゃん。一人でやるのは、怖いから」
さんざん職務に忠実だったえみるを、彼女はどんな思いで見ているか。自分本意な元同僚に憤っているか。それとも、以前のように意気地なしだのヘタレだのと言って、親友気取りで笑いたがっているか。