ジェンダー・ギャップ革命
第9章 安息を望むには苦しみ過ぎた
目新しい事件が別に起きれば、人は次に目を向けたがる。えれんのニュース、それに彼女の辞職や刑事責任、民事処分を求める声は、どこかに強盗でも入れば徐々に弱まるものと、想像していた。
愛津の期待は、甘かった。
真偽はともかく、えれんを攻撃する根拠となる材料は、芋づる式に暴かれていく。
久城によると、大越に聴き取りを求めてきた記者達もいるらしい。英真の見付けた雑誌の記事では、えれんと淫らな関係を持った男達の証言を集めた特集まで組まれていた。
「はい。……──はい。申し訳ありません、神倉えれんの指示で、この件に関して役員は回答を控えさせていただいております。……申し訳ありません、私からは何もお答え出来ません」
相変わらず鳴りやまない電話の一つに応じた織葉が、ようやくのことで受話器を置いた。
久城や泰子の元に避難している内に負い目を感じたらしい彼女は、ことが重大になって数日のち、えれんから、事務所に戻る許可を得た。メールや電話の対応はやむを得ない場合のみという、条件付きだ。ただし飽きない市民達は、連日、彼女ら母娘の情報を漁っては、愛津達だけでは手に負えない件数、接触したがってくる。織葉が素性を隠し通せるような記者や市民は、まだ良い。対応に出たのが本人と分かると、意固地になって食いついてくる電話主が多くを占めた。