ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
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翌日、愛津とえれんの間に、以前の彼女らをとりまいていた空気感が戻っていた。
あの頃より親密にさえ見えるほど、睦まやかに事務所に出てきた彼女らは、同様に織葉と姿を見せたえみるに気付くと、安堵の色を表した。
愛津とどう過ごしていたのか。気晴らしは出来たか。
小休憩中、織葉がえれんにお茶を注いで昨夜の詳細を探りにかかると、彼女が悪戯な顔を浮かべた。そして、少し無礼講に長話しただけだと答えた彼女は、逆に織葉に話を求めた。もし何かあったとすれば、どちらに妬くのか。えみるの家に朝までいた織葉こそ、彼女と何も起きなかったのか。…………
「もしお母様が為政者じゃなければ、ずっと私が側にいられるのにと思う」
「今でも側にいてくれるじゃない」
「白昼堂々、愛してるよって言っても、誰にも文句言われないということ」
湯呑みを手のひらに挟んでいたえれんの肩が、僅かに跳ねた。
織葉のえれんへの想いは、報道関係者らが自由気ままに憶測して報じ散らしているのとは、かけ離れている。
えみるは、もう純粋にえれんを慕えないと話していた。それだけ彼女の好意が切実なのだと痛感した。
世間は、彼女とは違う。えれんを、憂さ晴らしや日々の刺激の材料にしたいだけだ。かつて異性間の愛を至高と枠組みしていた世間は、近親の人間同士が愛し合えば、異常と見なす。