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ジェンダー・ギャップ革命

第10章 正義という罪悪



「選挙、勝って。愛津ちゃんなら絶対にいける」

「当たり前です。「清愛の輪」を与党に戻して、神倉さんに、豪華ディナーでお祝いしてもらう約束なんです」


 そして、えれんや織葉の目指した未来を実現させる。

 窮屈な暮らしに耐える女、人生を選べず泣く女、世間の道徳に壊される女──…彼女達の悲しみは、根絶やしにする。

 男に同情して、ほだされて、彼らの過失を二度と繰り返させてはいけない。女達は、彼らの罪を忘れてはいけない。

 えれんが基盤を固めた現代こそ、本来、社会のあるべき姿だ。犯罪件数は激減して、経済は回って、女達が頂点に立つ各企業は、年々、業績を伸ばしている。かつて性的少数派と呼ばれていたタイプの人間が、今ではオールマイティで、あとは異性愛者への差別を対策すれば、社会はより良くなるだろう。

 愛津には、男達を恨むほどの理由がなかった。しかしえれんの過去を知って、彼女の論理を聞く内に、家畜化する合理性は理解した。

 この世に正義は存在しない。正義が存在した時点で、他の誰かが否定される。

 社会は、常に誰かを攻撃して、均衡を保つ。誰もが認め合えるとすれば、それは社会ではなく、人のかたちの抜け殻による集合体だ。


 愛津は愛する人の理想に従う。それを誰かが罪悪と呼んでも、どうせ差し替えられる正当も存在しない。







ジェンダーギャップ革命──完──

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