ジェンダー・ギャップ革命
第10章 正義という罪悪
「往国の子供は、英真ちゃん達が里親を申請してくれた」
「え、聞いてない」
「英真ちゃんであの容姿だから、きっと母親違いの妹も、美人だろうって。英真ちゃんは多分、お母さんに似たんだろうけど」
「でも、英真ちゃんとしづやちゃんのお子さんなら、幸せになると思います」
「愛津ちゃんのところは、そういうお話しない?大越湊斗は、まだ使えている。綺麗な子に育つかも」
「神倉さんには、トラウマですから……」
もとより織葉と大越は、血縁がなかった一説の方が強い。
大越湊斗は、えれんに何も与えなかった。何も与えず、一家の大黒柱を気取って、彼女を所有物と誤認していた。
愛津の母親も、えれんと同じ被害者だ。
仮にあの母親が、えれんのように配偶者を見限っていたとする。愛津は、彼女と母娘の関係を、今でも続けていられただろう。しかし彼女はそうしなかった。彼と一緒になって、愛津からの搾取を試みた。
彼女の言動を振り返ればこそ、愛が彼女を縛ったとは思い難い。
ただ生来の臆病や、旧時代の道徳が、彼女を諦念させたのだ。