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ジェンダー・ギャップ革命

第3章 道理に適った少子化対策


 大越湊斗(おおごえみなと)も、えれんを消耗品として見た一人だった。

 えれんは、限界だった。
 就職して三ヶ月で解雇を言い渡されてからというもの、高齢の両親を生活させるための金を工面しながら、自身の寝食も維持せねばならなかった女に対して、どこの企業も素気なかった。もとよりえれんを解雇した組織の人事さえ、女には永久就職があると言って、悪びれる様子を装おうともしなかった。

 大越にとって、えれんが彼を愛しているかは問題なかった。地方公務員だった彼にはローンのない家があって、申し分ない程度の収入があった。彼にないのは、従順な人形だった。えれんにないのは、最低限の生活だった。

 幸い二歳差だった二人は、周囲から見て馴れ初めがギャラ飲みとは想像つきにくかった上、花嫁が金銭目当てに求婚を受け入れたと勘繰る第三者もいなかった。



 愛津が母親とひと悶着あった数日後、えれんは彼女と二人で話す機会を得た。他の役員達が外の用事へ出かけた本部で、休憩がてら、彼女に本題を切り出した。


「愛津ちゃんのお父様って、お仕事されていないのよね。もし本当に貴女やお母様が不自由を感じているなら、力になりたい。お父様にお仕事を紹介するか、収容所へ送るか手続きするわ、どう?」

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