ジェンダー・ギャップ革命
第3章 道理に適った少子化対策
刹那、愛津の目に明るい色が差した。
条件反射的に彼女が口を開いていれば、えれんの提案したいずれかを選んでいたかも知れない。
だが彼女は臆病だった。そしてすぐさま辞退しないのも、彼女の勇気の欠乏だろう。
「質問して良いですか」
「どうぞ」
「神倉さんは、配偶者だった人をあすこに入れられたんですよね。本人や親族から恨まれるリスクや、家族だった人が犯罪者になることについて、怖くありませんでしたか」
愛津の反応こそ、多分、正常だ。
十人に問えば七人は、きっと彼女と同じ恐れをなす。
えれんや久城のネジが外れていただけだ。
昔なら決断を遅らせただろう、だがえれんは金で人生を買われて、久城は女としての責任を問われて、科学者として軽んじられた。
菓子皿に伸びた愛津の手が、同じビスケットをつまみかけたえれんの指に触れた。えれんが彼女にそれを譲ると、彼女も同じ遠慮を見せた。