真夏の夜の夢
第6章 第五夜
「知美、荷物を運ぶのを手伝ってくれるかい?」
豊は車のトランクから乾電池式のランタンと
ペットボトルの飲料水を大量に運び始めていた。
「そんなものが必要なの?」
「外見上は閉鎖されてまだ間がないから綺麗だけど、水道、ガス、電気といったライフラインはストップしてるからね」
「えっ?じゃあ、キャンプみたいなものじゃない」
水道水もガスもないのならお風呂はどうするのよと
知美は不満げに頬を膨らませた。
「温泉地だから少し移動すれば公共のスパがあるからそこで体を洗えばいいじゃん」
豊は男だから面倒でもないのだろうけど
なんだか邪魔くさいわねと
憂鬱になった。
だが、そんな憂鬱も部屋に足を踏み入れると
杞憂に終わった。
電灯も点かないので真っ暗だったけど、
ランタンを灯すとそれなりに雰囲気があって
幻想的だった。
「あら、素敵なお部屋じゃない」
寝具もそのままでカビ臭いのを覚悟したけど
まだほんのりと柔軟剤の香りがしてたので
これならぐっすり眠れるわねと安堵した。
ベッドに腰かけていると豊が「俺、なんだかムラムラしてきちゃった」と言って
知美をベッドに押し倒した。
「ちょっと待ってよ…
スパで汗を流してからよ」
知美は、やんわりと豊の誘いを拒んだ。