真夏の夜の夢
第7章 第六夜
待つこと一時間。
ようやく来てくれたタクシーに飛び乗って
住所のメモを渡した。
「すまんが、そこまで頼むよ」
「了解しました~!」
かなりの長距離なのか
メモを見た途端にタクシードライバーは上機嫌になってタクシーを疾走させた。
短期出向ということで
会社が用意してくれた宿泊所が
マンスリーマンションであった。
調度品も家具も寝具も揃っているから
荷物を持ち込まなくてもいいから楽だろ?
そのように言われたのだが
どうせならホテル住まいさせてもらいたいところだった。
まあ、マンスリーマンションなら
そんなにひどい場所ではないだろうと
安易に考えていたのが間違いだった。
そのマンションというのが
一応は鉄筋コンクリート作りのようだが
傍目にみてもボロい建物で
大きな地震が来れば倒れそうな物件だった。
管理人に「ひと月だけお世話になります」と伝えて鍵を頂いた。
『302号室か…』
エレベーターで3階にあがり、
フロアに足を踏み入れるとヒンヤリとしていた。
見かけはボロいけど、
しっかりと断熱されているんだな…
こんな過疎地にマンスリーマンションになど入居するものはほとんどいなくて
管理人の話だと三階は僕ひとりだけだそうだ。
まあ、その方が気楽でいいや
302号室に上がり込んで
備え付けのソファーにごろんと横になった。