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マッチ売りの少女と死神さん

第6章 1月3日…あと刹那のその時まで



サラの片方の頬にあたっていた手のひらが上の方に移動して、頭を優しく撫でてくる。

そうしながら目を細めたホーリーの表情は眩しそうにも寂しそうにも見えた。
そんな彼を初めて見たサラが頭に疑問符を浮かべて戸惑う。

「甘えるのは悪いことじゃないんだよお。 だから恥ずかしがる必要もない」

(悪いことじゃない……?)

そう言われても、サラには甘えるという行為自体が受け入れがたかった。


『嵐が怖い? もう子供じゃないんだから甘えるんじゃない』

『あの子が腹痛って言ってたの? ダメよお、甘やかしたら癖になるんだから。 どうせ仮病でしょ』


思い付くのはお父さんやあの人の、家の事ばかりで。

………それでももっと昔は。
ミルクをこぼしてしまった時にお母さんが拭いてくれて、お父さんは優しく笑っていたっけ。
新しいものを注いでくれたおばあさんは、自分を膝に乗せてくれた。 そんな暖かだった、かつての家の風景にサラの胸が切なく痛んだ。


(私が甘えを悪いことだと思うのは、周りから許されなかったからなのかしら……?)

そうしたら、自分にとっての『良いこと』と『悪いこと』は周りの人によって変わるの?
心許ない気持ちになったサラは、自分を撫でてくれているホーリーを見上げた。


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