
マッチ売りの少女と死神さん
第6章 1月3日…あと刹那のその時まで
ホーリーとはマイペースで時おり言動が意味不明ではあるが、それゆえに彼がした行動の結果が結局の所、相手を喜ばせてしまう。 サラにそう思わせてしまうふしがある。
サラはそんな彼だからこそ気後れなく、素直に感謝することが出来るのである。
(このお洋服もそう。 これ以上ホーリーさんに甘えるなんておこがましいことだわ)
そんなわけでサラは何か新しいものを口にするたびに、「いただきます!」とお礼を言って周囲の人を振り向かせ、その都度クスクスとホーリーに笑われていた。
まだ汚れていない、踏みしめる雪に朝の陽光が降り注ぐ。
サラが海の方へ視線を向けると、淡いミルク色の空の下で穏やかな波が反射し、眩しく照り輝いていた。
周りには彼の姿は見えないかもしれない。 それでもホーリーと一緒にここを歩くのは、どこかむず痒くも高揚してしまう気持ちを抑えられずにいた。
それでもただ一つだけ、サラが気になっていたのは。
こうやって陽の下にいると、余計に際立つホーリーの青白さだ。
すれ違う人とは全く違い、車道側を歩く彼は海にでも吸い込まれそうに透けて見える。
今朝までぐっすりと寝ていたようなのに、今も最初の頃よりもむしろ、目の下の隈が濃くなっている気さえする。
お腹も落ち着き、そんな様子のホーリーを気にかけながら歩いていた時だった。
「ヒッ…!」
サラを見た知らない男性が急に掠れた悲鳴をあげ後ずさった。
