
マッチ売りの少女と死神さん
第6章 1月3日…あと刹那のその時まで
そこに居たのはホーリーに似た『なにか』だった。
ただ人の形を模している、青緑がかった肌色はまるで月日の経った死人のよう。
実際にサラはそんなものを目にしたことは無いが、言葉に出来ない、強いていえば醜悪な不吉さを感じた。
のっぺりした印象の肌は硬そうで、目の位置に黒い穴の空いたお面を被った、作り物の顔が彼の形をしている、ただそれだけ。
何よりも彼女を驚かせたのは、その首から袖から幾筋にも流れる赤黒い───────
(………血?)
『お兄ちゃんはまるでお人形さんみたいね? 血が出てるけどちっとも怖くないわ』
(ローラちゃんは『これ』を見たの………?)
同時に、『化け物』と叫んだ、先ほどの男性の声がサラの頭に浮かんだ。
サラは震えそうになる体を抑えて二度、三度首を横に振り、もう一度ホーリーを見据えた。
「あ……」
「サラちゃん?」
頭を傾けて名前を呼んでくるホーリーは………元の彼だった。
続いて、周囲の雑踏が何事も無かったかのようにサラからいつもの感覚を取り戻させた。
それからサラは、直前のホーリーの言葉を思い出した。
自分はどう見えるのかと、彼は聞いたのだ。
「……今は普通、ですけど。 ひ、酷い……怪我を? それから、ホーリーさんは……」
「死神っぽかったあ?」
