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マッチ売りの少女と死神さん

第6章 1月3日…あと刹那のその時まで



くつくつと笑い声を立てるホーリーは余程何かが可笑しいのか、俯いて袖口で顔を覆った。

「フ、フフ…ッ…鐘のせいかなあ……プッ…いやね、来た時は多分……君の言う普通、だったんだけど。 嘘ついてた訳じゃなくってさ、言ったと思うけど僕は元々人から生まれ」

ホーリーに歩み寄ったサラが彼の肘を取った。
不自然に震える彼の声がそうさせた。

「……何で…君が泣くのさ。 ねえ、こんな僕を好きとかさ。 笑えるでしょ?」

サラは自分でも分からなかった。
無理に口の端を歪めるホーリーの表情はあまりにも痛そうで悲しそうで、サラの目から次から次へと涙が溢れた。
先ほど見た、本当のホーリーの姿は奇異で不気味だった。 けれどそれ以上に。

『お兄ちゃんは………そうね。 彼はとても弱く見える』

サラは咄嗟にホーリーを庇うように彼の背中に両腕を回してしがみついた。

「君は……あんな僕を見ても怖くないの………?」

彼の腹部に顔を押し付けていた彼女は大きく頭を左右に振った。
彼自身を恐ろしいと思うには、サラはホーリーに情を移しすぎていた。
この世でたった一人、孤独だった少女の体と心に触れた存在────サラにとって彼はそれ以外のものではない。

「会ってから僕は時々、サラちゃんに対してどうしようもなく苛つくことがあったんだよね」

小さな彼の声が頭の上から降ってくる。
か細く頼りない、そんな声。

「今もだよ。 ねえ、どうしてだろうね……」

ホーリーはサラから離れるわけでもなく、抱きしめ返すわけでもなく、その場に立って彼女を見下ろしていた。



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