
マッチ売りの少女と死神さん
第6章 1月3日…あと刹那のその時まで
「死なないって、なんで……約束って…ホーリーさん?」
一方、サラは事態が飲み込めなかった。
その前に、それなら余計に、なぜホーリーがここにいるのだろう? そんな考えが先に立ち、
「体は……辛くないですか?」
なぜだか歯に物の詰まったみたいな質問をしたサラに
「辛いとか痛いのは慣れてるよ」
ホーリーは似たような物言いと苦笑いを返した。
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「さて、宿へ帰ろうかあ」
ホーリーが元ののんびりとした話し方に戻り、サラが約束の時間に近付いていることに気付いた。
それから言葉少なにホーリーと歩く、サラの心中は複雑だった。
死なないと聞いてもなぜだか嬉しく思えない。 そんな自分が不思議で、その理由を考えていた。
(突然信じられないことを言われたから? それとも、またあの生活に戻らなきゃ駄目だから? ううん、それこそ……それは、甘えというより怠慢だわ)
宿に着きまもなく。
しかしサラのそんな二つの杞憂は、訪ねてきたクラース氏によってひと時の間、振り払われることとなる。
「家での滞在は明日まで伸びることになりました。 船の出港が遅れたせいです。 なにせほら、昨晩の大雪のお陰で」
テーブルに向かい合い話している二人の背後では、ベッドに腰掛けたホーリーが話を聞いていた。
「ローラは喜んでいますけどね。 それで、これは娘とも話し合ったことです。 サラさん、私の養女としてローラの姉として、うちへ来ませんか」
「………」
