テキストサイズ

マッチ売りの少女と死神さん

第6章 1月3日…あと刹那のその時まで



驚いて瞬きを繰り返すばかりのサラの背後からホーリーの声が聞こえる。

「ほら、僕が言った通りでしょお?」

「で、でも私には………父がいますし」

今、お父さんは何をしているのだろうか。 サラはそんなことをチラリと思った。 ダイニングでお酒を飲んでいるか、寝室であの人と一緒にいるか。

「………申し訳ありませんが、今の貴女の暮らしぶりを知ってのことです」

暗くなりそうなサラの気持ちを振り払うかのように彼女を見る、慈愛に満ちた温かなクラース氏の目付きだった。

「私はどうしてもあの人に………貴女のおばあさんに恩返しをしたい。 もちろん、サラさん自身とお話をしてから考えました。 並ならぬ苦労をしているというのに、こんなにも素直で聡明な娘さんだ。 おそらく貴女はとても………おばあさんに愛され可愛がられていたはずです。 違いますか?」

その時のことを思い出したサラが涙ぐんだ。
クラース氏がそんなサラの気持ちを慮ってくれたのか、優しく力強く、彼女の手を両手で握る。
骨ばった彼の手は大きくて、戸惑いの色を見せるサラに頼もしく笑顔で頷いてみせた。

「とはいえ急なお話ですから、すぐにお返事をもらおうとは思ってません」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ