マッチ売りの少女と死神さん
第7章 1月3日…ただ触れていたいから
こんな時に、ホーリーが普段は脇へ避けている思いが顔を出す。
────他の男にやりたくないなあ
(それはもう…無理だけど)
クスリと自嘲気味に笑ったホーリーは身を起こした。
ぽおっと頬を染めて自分を見詰めているサラに口付けをする。
意識せずとも体が勝手に動く。
彼女の唇を食む、この瞬間の彼にあるのは彼女へと愛おしさ。
それとこの口付けが、こんな風に直結するのがホーリーは不思議だった。
自分に無用な性欲というものの存在が不思議だった。
ここに来て、その理由にようやく思い当たった。
物心がついてから、彼が初めて意識したサラという少女。 誰よりも彼女を知っていた、自分のいわゆる愛に近しいもの。
深い執着に支えれたそれは今も揺るぎない。
冥界にいた頃から、彼にはサラのここがいい、あれもこれもいいと、無数のポイントがあった。
けれど彼女に触れて変わった。
密集したいくつもの愛の融合体は絡み合い、紡ぎ合い、しまいに凝縮されて滴り落ちる。
落ちてもなお広がり、周囲の色を巻き込んで花のように育っていく。
そのおびただしさに惑い、またはそのかぐわしさに誘われて、どうしようもなくなって、だからホーリーはサラにキスをする。
なぜならそうしないと崩れてしまうからだ。 けれどもサラの鳶色の瞳に出会い、視線を絡ませると分からなくなる。
今こうしないと、彼女の方が先に崩れてしまいそうに思えるからだ。 そしてとても密やかで小さな、彼女の吐息を唇に感じた時に心からの安寧というとびきりの贈り物をホーリーは彼女から受け取る。 ぎこちなくも返してくる口付けの動きを感じ、するとホーリーは真理という言葉を脳内で反芻した。
まるで飴玉を転がすように甘やかな感傷を味わい続け、そうやって結局のところ帰結する場所の一端が性交という行為に過ぎないのである。
そんな時ホーリーは、自分の性が雄で良かったと思うと共にやはり自分は彼女と結合するために作られたものであると思える。 それは目の眩むほどの幸福感だ。
サラの悦びの全てを感じたいし分かち合いたい。 もっともっともっと。