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マッチ売りの少女と死神さん

第8章 1月3日…お別れの調ベ 前編



ベッドから起き上がりかけた時のことだ。

(ホーリーさんの言う、他人を傷付けるって、具体的にどうすればいいのかしら)

うんうんと考えにつまって、床に足をつけたサラの肘をホーリーが緩くつかんだ。

『どこ行くのお』

『え…お、お手洗いですけど』

そう答えるサラの後ろをホーリーがのらりくらりとついて来る。

『おしっこする所見ててもいい?』

『え…何でですか? む、無理です』

背筋にゾッとしたものを感じたサラは恐ろしいものを見る目付きで彼を振り向いた。

『じゃ、手伝っていい?』

『絶対イヤです』

『うーん、我儘だなあ。 じゃあ飲ん』

彼が言い終わる前にサラは音を立ててバスルームの戸を押した。

『ふう。 どうやら呪いの言葉を最後まで聞かずに済んだわ……』

青い顔をしたサラはドアに背中をつけ、心から神に感謝したのだった。



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