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マッチ売りの少女と死神さん

第8章 1月3日…お別れの調ベ 前編



「パパ!! もう! 寝ててって言ったのに! 夕食なんかあたしが作るってば!!」

「は、早いねローラ。 だってお前は実際家事なんて何も」

「去年みたいにコケたあげく寝込まれる方が困るんだから。 せっかく前の陰険なメイドババアを追い出したばっかりなのに、またろくでもないのが来たら。 ああああ、そうしたら!! 繊細なあたしは食事どころか夜も眠れないわ。 いーい!?パパ。 何としてでも、私とおんなじ能力を持ってるサラお姉ちゃんに、パパの子供になってもらうのよ。 学校はおろか、家でも変な目で見られるなんて、あたしの息のつける居場所が」

「ローラローラ……ちょっと黙っておいで」

「あら、何よ。 心配いらないわ。 お姉ちゃんの前では当分大人しいフリを」

帰るなり口を開きひっきりなしにまくしたてていたローラの目線が、テーブルの天板から目だけを決まり悪げに覗かせているサラとかち合った。

何と言えばいいのか。 サラはとりあえずローラにぎくしゃくした微笑みを向けてみた。

「こんばんはローラちゃん。 今日は………お喋りで、元気だね」


ローラは無言でサラを見詰めた後にスカートの両端を上品につまんだ。

「サラお姉ちゃん、こんばんは。 ご機嫌よう」

「お前そんな……今さら取り繕っても」

クラース氏のツッコミにローラがよろりとバランスを崩し、テーブルに手をついて寄りかかる。

「あっ…あ、あのッ…! これは!」

青い顔をしたローラは何か言い訳を考えているようだったが

(ホーリーさんみたいに、不思議な力があったり見えないものが見えたりする人って、変わった人が多いのかしら)

サラは単に不思議に思った。

(毒舌なのも似るなんて興味深いわ)

続けて勝手に納得する。

「さ、サラお姉ちゃ」

「ローラちゃん。 料理は私が勝手にやってるから、お父さんは悪くないんだよ。 今スープを作ってるけど、トマトは好き?」

立ち上がったサラが言うと、ローラはトマトみたいな真っ赤な顔してそのままストン、と椅子に座った。

そしてこくんと首を縦に振る。


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