
マッチ売りの少女と死神さん
第8章 1月3日…お別れの調ベ 前編
「……ホーリーさんは元気だった? 出掛けていたのね。 昨晩からもやっぱりずっと調子が悪そうで。 怪我とか色々」
サラが身を乗り出すとローラは少し陰りのある表情をした。
「だから、元の場所に帰ると言っていたわ。 じゃなきゃもう間に合わないからって、あたしもそう思う」
「そう……そうなの……でも、良かった」
あんなに頑なだったのに。
途中でホーリーの考えが変わったのだろうか?
そうでなければなぜ自分じゃなく、ローラには話すのだろう。 と、一抹の寂しさが込み上げてくる。
「良かった……」
それでもサラは心の底から安堵の息を漏らした。
ホーリーが消えてしまわずに済むのなら。
「サラさんさえ良ければ、ここに泊まっていくといいですよ。 事情が事情ですから……留守中のことは必要なら私もご実家に説明にあがります」
「おぞましいけど、万一お父さんとのことを下手に勘繰られても困るわね。 あたしも一緒に行くわ」
「いえ、いいんです。 これは私の問題ですから。 親切なお二人には感謝してもし切れません」
サラは二人に深々と頭を下げた。
ただの他人がこんなに良くしてくれる。 それだけで、次へ進む勇気が湧いてくる。
「あたしは別に親切でしてるわけじゃないわ。 下心があるもの」
サラが目を上げると、ぷいと横を向いたローラは不機嫌そうな顔をしていた。
「ローラちゃん。 自分の親切心を誤魔化したらいけないと思う。 あなたは初めて会った時でさえ、私のことをとても心配してくれたもの」
「はあ? あれはお姉ちゃんがあたしを助けてくれたのよ」
初めて出会った時、それからわざわざ自分のことを探しに足を運んでくれたローラ。
