
マッチ売りの少女と死神さん
第8章 1月3日…お別れの調ベ 前編
(だとしたら。 ああ。 何てことかしら!!)
……それはさぞかしホーリーにとっては、窮屈で、心が休まらなかったことだろう。
彼が話したくても話せない、その原因をサラ自身が作っていたのなら。
『僕にだって心はある』
サラはホーリーに対する申し訳なさと羞恥のあまりにテーブルの下に潜り込みたくなった。
「あ、ああああ………!!!!」
突然声をあげてテーブルに突っ伏したサラに、氏がビクッと体を固くした。
「え、どうしましたか急に」
「し、謝罪を……しなければ」
普段はローラとは違う意味で大人びて落ち着いているサラである。
そんな彼女が顔を上げられずにプルプルと俯いて震えている。
どうしたものかとオロオロしていたクラース氏が、キッチンに戻ってきたローラを目で捉えた。
「……ふう、無事に日を改めてもらったわ」
「ローラ、サラさんが突然」
「あら、サラお姉ちゃん? どうしたの、死にかけのカエルみたい」
(嫌われて締め出された私なんて、ホーリーさんの目に入らない方がいいと思っていた)
けれど本当は、本当は。
「私ずっと、お礼…を、言いたかったのに……」
何も言わずに彼の元を去ったことを激しく後悔していたのだ。
サラが勢いよく立ち上がる。
「っローラちゃん!! ホーリーさんとはどの辺りで会ったの? もう帰るとか言っていた?」
「……いいえ、お姉ちゃん? あの人に会いたいかしら?」
「うん、でも、これは私の問題であるべき」
────と、言いかけたサラは失言とばかりに口を閉ざし、苦笑したいるクラース氏に、申し訳なさそうに体を小さくする。
「お姉ちゃんは自分の思い込みで、変な気を回しすぎるのよ。 心配いらないわ。 あの人なら、すぐに会わせてあげるわ」
「え」
その直後、ローラはクラース氏の背後にある窓を全開にし、近所中に響き渡りそうな声で……叫んだ。
