
マッチ売りの少女と死神さん
第8章 1月3日…お別れの調ベ 前編
「キャーアアア!!! 大変だわ、サラお姉ちゃんが! サラお姉ちゃんのエプロン姿が可愛いわ!!!」
「ローラ?」
「ローラちゃん?」
氏とサラは顔を見合わせた。
「どうしたんだい、気でもふれ」
言いかけるクラース氏を無視してローラが得意げにキッチンを見渡す。
「ほら、よく言うでしょう? 妖精を呼ぶには玄関先にミルクを置いておくといいって」
「はあ……?」
「あの手の生き物を呼び寄せるのは大好物を使うのに限るわ」
うんうん納得している様子のローラに氏とサラが再び困惑した表情を交わし合う。
「ホーリーとはサラさんの宿にいたミスターのことかい? ………にしても、いくらなんでも」
「エプロン姿………?」
(ローラちゃんはホーリーさんをなんだと思ってるのかしら)
猫かカブトムシでもあるまいし。 サラは静かに首を横に振った。
大体、あんな別れ方をしたホーリーがそんなことで来るわけが。
コンコン────……
「ほらね、やっぱり!!」
またもや玄関先に走っていくローラ。
(えええ……)
そんな彼女をがく然と見送るサラとクラース氏であった。
だがそのすぐ後にサラは、ホーリーに突き放された理由を知ることになる。
……サラの目には、もう彼の姿は見えなく、声も聞こえなくなっていた。
