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マッチ売りの少女と死神さん

第8章 1月3日…お別れの調ベ 前編




「可愛いでしょう?」

両手を腰に当ててなぜだか得意げに仁王立ちするローラの後ろにサラはいた。

「違うわ。 サラお姉ちゃんのためよ」

開けっ放しのドアから冷たい風が入り込む。
すぐ外は歩道で、そこを通る人々、それから程なく向こうに大通り。

すっかり暗くなった景色しか、そこにはない。

「ね、うちに入ってお話するといいわ」

ローラが一人で話しているようにしか聞こえない。
サラはぼう然とその場に立ち尽くしていた。

「ホーリー……さん?」

サラの震え声にローラが怪訝な顔を向け、その硬い表情と、次に、その場ではローラにしか見えないホーリーを見た。

「ちょっと、どういうこと─────」

サラに視線を戻したローラが口を閉ざした。

目を開けたまんまのサラの頬に涙が伝っていたからだ。
悲しそうでもないのに、次から次へと盛り上がる水粒がサラの頬を濡らしていた。

それは留まることがなく、ローラはこんなに静かに泣く人間を初めて見た。
こんなに止まりそうにもない涙を初めて見た。


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