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マッチ売りの少女と死神さん

第9章 1月3日…お別れの調ベ 後編


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────ここはゲストルームかなあ?
ベッドは無いけど、くつろげそうなソファがあるよ。 後からお茶を持ってきてくれるって。


クラース氏の案内で、通された部屋の内部をホーリーが見回しているようだった。


────サラちゃんは腕が細いからね。
そんな風に頸動脈圧迫されたら普通なら落ちちゃうねえ。
防犯になるから覚えとくといいよお。


グフフクスクスと笑いを零す様子や口調はいつものホーリーだ。

彼はサラを膝に乗せて大きめのスツールの上に腰を下ろした。
サラは彼にしがみついて泣き続けていた。


────……ねえ、泣いてる子って、抱いてあやしてれば泣き止むんじゃなかったっけ?


困ったように呟いたホーリーがサラの目の下に自分の頬を合わせる。
冷たく肉付きの薄い彼の肌。
その感触がサラに伝わった。

「……だから私、赤ちゃんじゃないわ」

拗ねた子供みたいに聞き分けなく振る舞うサラ。
そういう彼女を知っているのもまた、この世では彼ぐらいのもの。

「ホーリーさん、冥界に帰るって本当?」


────……うん。



「……私、もしかして……ホーリーさんに自分の勝手な意見や理想を押し付けて、窮屈な思いをさせたのかなって、思ったん……ですけど」


────さっきの彼女の話? なら、僕には全く当てはまらないよ。
それに君の言うとおり、自分の役割を途中で降りるのが間違いなのも理解はしてる。 よくよく考えると、災いが起きたら君にも危害が及ぶかも知れないし。
ただ僕は、なんていうか。


ホーリーの言葉の続きが無かったのでサラは彼の肩から顔を離して首を傾げた。

「なんていうか……?」

とん、と頭でホーリーの顎らしき所を軽く押してみると頭頂部をゴリゴリ刺してくる。

「いっ、痛いです! ホーリーさん顎、細いから!」

文句を言うサラの上で軽い笑い声がした。


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