テキストサイズ

マッチ売りの少女と死神さん

第9章 1月3日…お別れの調ベ 後編



「死神さんには普通は、性別はないんですか?」


────無いと思うけど。 そんな記録は残ってないし。
僕の場合はそう、あれは君が三歳の頃の映像を観た時に、思いがけずこう、ドピュッと。
僕の体が人間に慣れて性徴を迎えたのかなあ。 驚いたけど、懐かしいねえ。


「………さ…? さん……?」


────僕は過去を自由に見聞きできるって言わなかったっけ。
だから、言っておくけど、それはその前に成長したサラちゃんを好きになってからの話だよ。


彼の声は耳に入らず、サラは三歳の女児に欲情するホーリーを脳裏に浮かべては青ざめる。


────うれしい?


(何が!?)


サラは彼のこの発言は脳内から抹消することにした。

代わりに

「冥界にはピアノは……ないんですか」

何とはなく違う話題を振ってみる。

あんなものを初めて弾いたとはやはり信じ難かったからだ。


────あそこには何も持ち込めないから。



「お、お仲間はいないんですか。 死神さんでなくても、何か」



────お仲間、ねえ。


何となく歯切れが悪い。

自分のこととなると、相変わらず口が重いホーリーである。
が、表情が分からないのをいいことに、サラは彼に向かってめげずに質問を投げた。

「そ、そう。 さっきは妖魔が何とかって聞こえました」


────いないよ。 自我のある生き物はね。
妖魔ってのは精霊みたいに植物や土なんかの、エネルギーのある物から生まれるわけじゃないから。 つまるところ……共食いしたり分裂する低級なものなんだよね。
ついでに、僕の冥界での、たまの食事も妖魔。


………それは人間が人間を食べるようなものだろうか。 妖魔出身のホーリーにいたっては、これも人に例えると、つまり生きている赤ちゃんを……


────今、グロいこと想像したでしょお?


間を置いてサラは正直に頷いた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ