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マッチ売りの少女と死神さん

第10章 1月4日…死神さんに恋をしました



彼の言葉どおり、死神となった冥王とカリヌはいつも一緒いた。

カリヌは様々なことを死神に教えた。

成長した死神は不思議な力を使えるようになり、手も触れずに大岩を砕いたり、妖魔の群れに襲われそうになってたカリヌの周りを唸り声だけで蹴散らした。


だがその内に、カリヌは段々と弱っていった。
死神は彼のためにオアシスを広げたくさんの水を用意した。
……そんな死神の努力も虚しく、カリヌはとうとう動かなくなった。

彼を抱いてオアシスに連れて行った死神は、身振りで彼にもっと水を飲むようにと促した。

「気にしないで良いよお。 喋んなくってもさ、僕は冥王のことをよく分かってる。 たださ、この先のアンタのことは気がかりだねえ」

水も口にせず、静かに首を横に振るカリヌに、死神は途方に暮れた。

「本当は僕が冥界に向かうって聞いて、周りからは同情されたんだけどさ、まっ。 優しい王様と一緒にいれてさあ、クククッ、僕は楽しかったよお……」

こと切れたカリヌの傍らで、死神はいつまでもはらはら涙を流し続けた。
……自分より彼の肌は艶がなくなり、頭は小さくしぼみかけていた。


────彼、カリヌは天界の生き物であった。

冥界に長く留まることはカリヌの寿命を縮めた。

死神はおぼろげにそれに気付いていたが、言葉を発すればカリヌが離れていってしまう。 それを恐れ、カリヌもまた、そんな死神の心の内を分かっていたのである。

カリヌの脳は知力の塊であり、それを死神に食物として分け与えていたことも、カリヌ自身の負担になった。



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