
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
「で、時々世界的な疫病や戦争なんてものが起こるのは、僕みたいな存在が死んだか生まれたての時だねえ」
「す、すごく重要で崇高なお仕事なんですね……!!」
サラは両手のひらを口の前で合わせ、尊敬の眼差しで彼を見上げた。
するとホーリーは困ったような怒ったような顔付きをしてぼそっと言った。
「僕は特に何も……直接その人間と関わったりなんかもしないし」
「え、けど、私には関わってますよね……?」
「………」
(また横を向いて黙ってしまったわ)
彼の視線が止まり、外を見ていたホーリーがおもむろに立ち上がる。
「僕、少しだけ外に出てくるねえ…適当になにかを頼んで、先に食べてるといいよ」
「は、はい……?」
言うが早くホーリーが店の外へ出て行った。
彼の姿が見えなくなってサラは思った。
(もしかして、これは…家に帰れるチャンスでは……?)
トクン、と、サラの胸が鳴る。
なにしろ昨晩から、何の断りもなく家を空けている。
外泊するのも初めてならば、年越しの準備もおろかお父さんにお酒も買っていない。
何よりも、再び会えるかさえしれないお父さんに、サラは伝えるべきことがあった。
(ホーリーさんの目を誤魔化して内緒で行くとか? ううん無理。 あの人なら、なんならお手洗いにでも追いかけてくるわ)
サラがため息をついた。 それは奇跡の力だけの問題ではなく。
出会ったばかりとはいえ、サラはその辺りには妙な自信があった。
