
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
言われてホッとしかけた。
別の男性がサラをジロジロ見てくる。
「何もオレたちは子供を痛めつけようってワケじゃなかったんだよ。 せっかくの新年だ。 女っ気のない店で、ちいっとばかり、サービスをしてくれないかって誘っただけだぜ。 なあ?」
すると口を出したその人に向かい、女の子が声を震わせた。
「話が違う…っ。 さっきはそんなこと、ひ、ひと言も言ってなかったじゃない!」
「ハアン、そうだっけ?」
「………ま、それもありっちゃありかあ」
三人の男性がニヤニヤと顔を見合わせた。
「…あっ」
肘を取られたサラが小さく悲鳴をあげそうになる。
「おねえちゃん!」と女の子が止めに入ろうとした。
(この子、良い子なんだわ)
何よりもまず、少女をここから引き離したかったサラは笑顔を作った。
彼女の背中に手のひらを置き、小さい声で伝えた。
「私は平気。 さ、早くお家に帰って」
押された少女は歩を進めたが、何度か心配そうにサラを振り返っていった。
少女が見えなくなる前に男性が口を開く。
「来いよ。 なあに、男所帯の新年の宴会で、酒を注いでくれりゃいいだけだ」
「すみませんが……わ、私はここを離れるわけには、行かないので」
ホーリーと約束をしたし、そんな怪しい場所には全くついて行きたくない。 サラの本音だった。
「っ、離し…あっ」
サラがその場で足を踏ん張っていると
「ホーリーさん! もう戻ったんですね」
男性に上腕をつかまれていたサラが、前方に立っているホーリーに気付いた。
「へ? 誰もいないぜ」
ホーリーの姿に気付いたのは、最初にサラに話しかけてきた、三人の中でひと際大柄な男性である。
「んだあ、このひょろっこいの。 嬢ちゃんの連れかい?」
(この人にだけはホーリーさんが見えるんだわ)
それは長く生きられない人間であることを物語っている。
サラは彼が気の毒になってしまった。
「連れといえば、はい。 ホーリーさんは私の」
(………あれ。 私の、何?)
別に友達…ではない。 言いかけたサラは言葉に詰まった。
