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マッチ売りの少女と死神さん

第3章 1月1日…死神さんに注がれています


フン、と鼻を鳴らした男性が、ホーリーの胸を片手で小突いた。
細身のホーリーが一歩後ろに押され、そんな彼を男性が馬鹿にしたような目で見た。

「おいおめえ。 じゃあ、おめえがさっきのガキが盗んだパン代払えよ。 そしたらこの娘も離してやる」

その最中、「誰と話してんの?」「さあ」などと、ホーリーの姿が見えない残りの二人は、顔を見合わせていた。

「クク、店のは高級な材料を使ってるらしいからなあ」

「いやー? 僕、こんな子は知らないなあ」

「値が張る……あ?」

ホーリーから余分にお金を取ろうとでもしたのだろうか。 しらを切ったホーリーに、男性はいぶかしげな目線をよこした。

「おめえはこの娘の連れなんだろ?」

「知らないよお。 そもそも僕、昨日ここの街に出てきたばっかりだし」

「ホーリー…さん…?」

サラががく然としてホーリーを見つめた。
友達とはいえないまでも、赤の他人とまで匂わせた彼がサラは信じられなかった。
ホーリーはサラを見もせずに肩をすくめ、飄々とした表情を浮かべていた。
しばらくそんな二人を見比べていた男性が豪快に笑った。

「ってことらしい!! 残念だったな、嬢ちゃん。 ガッハハ、何にしろとんだ腰抜けヤローだぜえ!」

「まあ…よく分かんねえけどよ? 行こうぜトーマス。 外は冷えるしなあ…へへッ、うちの店に案内するぜ」

馴れ馴れしく肩を抱かれた瞬間、男性からお酒の臭いがして、サラが思わず眉根を寄せた。
そこから数歩ほど進んで大柄な……トーマスというらしい男性が、背後のホーリーを振り返る。

「あ、おめえ。 何ついて来てんだよ」

「うーん、なんとなく…興味があって…?」

「何シブい顔してんだよ。 いいじゃねえか、今日はめでたい日だぜ」

「大いに楽しむに限るぜえ」

「そうだそうだ! ハハハ!!」

「………」

太陽の陽射しが柔らかくふり注ぐ朝。
サラを半ば引きずり、なぜだか後ろにホーリーを伴った男性たちが、機嫌よさげに大通りを歩いて行った。



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