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マッチ売りの少女と死神さん

第3章 1月1日…死神さんに注がれています



────食堂でホーリーが席を立ったのはほんの十分ほどのこと。
手に持っていた紙袋を、いっそ放り投げたい気持ちになりながらも、ホーリーは男たちの後ろを歩いていた。

ホーリーは気分を害していた。
………サラが自分の禁止もきかずに、勝手に外へ出た。
あわよくば家に帰ろうとでも思ったに違いない。 そう思ったからだ。

彼女の未来。
それは森羅万象をうかがい見れるホーリーでさえも不透明である。
なぜならば、自分が昨晩にサラを連れ帰り、サラの寿命を延ばしたからだ。
それでもサラには、まだ死の運命は付きまとっている危険な状況だと、ホーリーは思っていた。

食堂ですべて言わずとも、サラはある程度理解したと思っていたのに。
軽率なサラの行動にホーリーは呆れていた。

(まったく。 何のために僕が苦労して、ここに来たと思ってるんだろうねえ)

元はといえば、ホーリーの私的な事情のせいなのだが、ホーリーは気が収まらなかった。

(ふん……まあ、いい)

ホーリーは前方の、素行の悪そうな男たちに目を向けた。
ホーリーは懲りずに画策していた。

(いっそよってたかって慰みものにでもなれば、この子もさすがに能天気な考えを改めるだろうさ)

時間がないのだから、この際荒療治は仕方がない。
そしてその後、自分は絶望に打ちひしがれる少女に囁くのだ。

『可哀想に。 酷いことをされたねえ…あの男たちが憎いかい? それなら………』

ホーリーはポケットに忍ばせていた硬質な凶器を握りしめた。
どんな理由があろうとも人を傷付ける行為は悪となる。
地獄には正当防衛なんていう言葉はない。


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