
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
………その一方で、ホーリーはサラについてあらためて不思議にも思う。
大概の人間にとって。
自分の死期が近いと知れば、大いに取り乱すのが普通だろう。
もしくは、せいぜい投げやりになるか。
しかしサラはどういうわけだか自分を保っているようだ。
『すごく重要で崇高なお仕事なんですね!!』
純粋に澄んだ目を自分へ向けた彼女。
ホーリーはそんな風に思ったことなど一度もない。
自分は古今東西、不吉で忌み嫌われる存在なのである。
そんなことは他人に指摘されるまでもなく、ホーリー自身がよく分かっていた。
だからこそ恐怖心をあおるために、あえて正体をさらしてから、サラの純潔を奪ったのだ。
ホーリーとしても予想どおり、満足のいくあの時のサラの反応だった。
今朝の晴れ間は美しいが下はぬかるんで足場が悪い。
前を歩いているサラの、ぶかぶかの靴が、また脱げそうになっているのに目を留めた。
ホーリーは新しいブーツを履いて、地面を飛び跳ねるサラを想像した。
(そうだ。 不思議といえば)
今朝もそうだった。
快楽に呑まれそうになり怯えて泣く。
それは多感な少女の反応なのかもしれない。
敏感ならばその後で絶頂に至ることもあるのかもしれない────ただし、そんなものが、真っ当な相手と普通の状況下ならば。
正直、あんなサラは想像していなかった。
そう考え、次にホーリーはとてつもなく淫靡だったサラの肢体を思い出した。
薄ピンク色に染まった肌のなまめかしさ。 刻々と変化する湿度と柔い。
普段は幼なくもどこか凛とした風情のサラである。
それでもってあの瞬間の、蕩けきった表情。
何よりもそれらを自分がサラに与えたという事実はため息が出そうな程に胸が苦しくなる。
中断したのは、理性が自分の性器もろともサラに引き摺り込まれそうになったからだ。
あんな頼りない感覚は未だかつて経験がなかった。
付け加えるなら、衝動のまま進んでしまったとはいえ、挿入した時のサラは昨晩の感触とは別物─────…
