
マッチ売りの少女と死神さん
第3章 1月1日…死神さんに注がれています
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大通りから脇道に入った所にあるパン屋。
薄暗い店内は確かに営業はしている様子だった。
ただし棚に並んでいるのは、中流以上の層がお客になることはまれなような、硬そうな黒パンばかり。
もっとも、サラはそんなものさえも、久しく口にしていなかったが。
着いたなりに男性たちが、奥の厨房で宴会を始めた。
現在サラは、せかせかと給仕に回っている。
軽食や軽いお菓子のお皿を運ぶたびに、サラは見入ってしまう。
(はあ…少しは何かお腹に入れてくればよかったわ)
そんな後悔を多少しつつもそれより。
時々、男性たちが舐め回すような目つきで彼女を見てくる。
サラは落ち着かない気分で始終俯いていた。
一方、ホーリーは彼らから少し離れた場所で、椅子の背もたれを抱えて座っていた。
まるで風景でも眺めるようにその光景を見ている。
彼らが熱く語る政治論などを、呑気に薄笑いを浮かべて聞いているようだ。
「なあ? 嬢ちゃんはどう思うよ?」
急に話を振られてもサラは困ってしまう。
「えっ…私は……難しいお話はよく分かりません」
「女に聞いても仕方ないだろーがよ」
学校を途中で辞めたサラは、読み書きや簡単な計算が出来る程度だった。
「ひひっ、女はしょせん慰み者よ」
戸口側に居た男性が、サラの胸の下に手を回し、引き寄せる。
彼はトーマスという男性よりも小柄だったが、がっしりとした横幅をしていた。
髭を生やした赤ら顔で、先ほど酒臭いと思った人物だ。
「ゃ、あっ…?」
悪ふざけのつもりなのか、男性がサラの胸を鷲掴みに揉んだ。
「い、痛っ…イヤ…!!」
指先が胸にめり込んで男性が唇を濡らした。
「おほっ、細っこい割にゃあ、結構……」
「止めて…ください…っ」
「へッへ……ノコノコやってきて、いいカッコしようとした責任は取らないとなあ? しばらく大人しくしてりゃ、ちゃんと返してやるよ」
